世の中金や!金がすべてや!なんていうように、お金の力って強いですよねー。
そんでお金の力の何よりも強いところって、そのわかりやすさにあると思うんですよ。
そんなわけで今回紹介する本は船戸与一の「虹の谷の五月」って小説です。
この小説はフィリピンのゲリラが出てくるんだけど、彼らはみんな民族主義とか、政治的思想とか、信念とか、そういったものを行動原理として生きているのです。
でも主義や思想ってちょっとわかりにくい。
例えば金を手にしたらどういうものが得られるかっていうのは簡単に想像できるじゃないですか。
うまい飯が食える。
良い姉ちゃんが抱ける。
高い酒が飲める。
こんなふうに本当に、簡単に、想像ができる。
けど主義や思想を貫いた時に得られるものというのは想像がしにくい。
だからこそみんなわかりやすい金の力に流れちゃうわけです。
ゲリラは主義や思想を捨てて金持ちを誘拐するようになる。
女は愛を捨てて男に体を売る。
男は正義を捨てて不正に手を貸す。
それが間違ってるとは思わないし、ある意味では正しいと思うけど、そういった感情とは別に金を得ることじゃないものを行動理念として生きてる人っていうのはカッコイイ!
ひとりで国と戦うゲリラや、金を積まれても不正な投票をしないじいちゃんとかすごくカッコイイ!
そんな感じでお金の力って強いなー、そして金を得ることじゃない理由で戦う人はかっこいいなーとか思った小説でした。
微妙にネタバレなんですけど・・・。
この小説ではお金の力に流されない人たちは結果的にみんな不幸になってしまうんですよ。
なぜならそういう人は少ないから、お金が好きな人たちに仲間はずれにされたり、お金が好きな人に目障りだとたたきつぶさたりしてしまうから。
今の世の中そうなるのは当然だよなーと思ったけど、自然とそう思ってしまうこともまた悲しいなーと思いました。