今回は博覧強記の作家、澁澤龍彦。
サド侯爵から黒魔術、悪魔、異端、異形、秘密結社、拷問、毒薬と人間の暗黒面の歴史をその膨大な知識とぶれない論評で暴き出し、文壇に孤高の地位と独自の価値観を築いた異色の作家。
澁澤についての人物評はいろいろありますが、かの三島由紀夫が澁澤の「快楽主義の哲学」という本の為に書いた序文が一番好きです。以下一部抜粋ですが―
「~珍書奇書に埋もれた書斎で、殺人を論じ、頽廃美術を論じ、その博識には手がつけられないが、友情に厚いことでも、愛妻家であることでも有名。この人がいなかったら、日本はどんなにさびしい国になるだろう。」
その後、三島由紀夫が市ヶ谷で自衛隊を前に演説し、割腹自殺を遂げた際に世の文化人・知識人がこぞってその意味をそれぞれの言葉で語りたがったなかで、澁澤は
「その行為をすべて肯定する。友人だからだ。」と短い言葉で記者のインタビューを閉めました。澁澤の人間性と2人の関係性をよく表した好きな言葉です。
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